マニュアルの作り方
業務マニュアルの作り方|6つのステップと構成の見本、事務の仕事での書き方の例
榎本 諒 ・ 更新 2026-10-14 ・ 約32分で読めます
「あの仕事、やり方を知っているのは1人だけ」。その人が休んだ日に、請求書が出せない。問い合わせに答えられない。業務マニュアルを作ろうという話は、たいていこういう日に出てきます。
ところが、担当者に「マニュアルを作っておいて」と頼んでも、なかなかできあがりません。どの業務から書くのか。どこまで細かく書くのか。誰が読むのか。決まっていないことが多すぎるからです。
この記事では、業務マニュアルの作り方を6つのステップで説明します。構成の見本と、事務の仕事(請求書の発行・経費精算・受付)を例にした書き方も載せました。例に出てくる会社や金額は、すべて説明のために作った架空のものです。
業務マニュアルとは
業務マニュアルは、ある仕事の全体を、担当でない人でも進められるようにまとめた資料です。作業の順番だけでなく、仕事の目的、全体の流れ、判断の基準、関係する人、締め切りまでを扱います。
「請求業務マニュアル」なら、請求書を作る手順のほかに、次のようなことが書いてあります。
- なぜ毎月5日までに送るのか
- 金額が合わないとき、誰に確かめるのか
- 取引先ごとに送り方がどう違うのか
- 入金が無いとき、いつ、誰が連絡するのか
手順を知っているだけでは、いつもと違うことが起きたときに動けません。業務マニュアルは、いつもと違うときにも判断できるようにするための資料です。
手順書・操作マニュアルとの違い
似た言葉に「手順書」と「操作マニュアル」があります。違いは、扱う範囲の広さです。

| 扱う範囲 | 書いてあること | 答える問い | |
|---|---|---|---|
| 業務マニュアル | 仕事の全体 | 目的、流れ、判断の基準、担当、締め切り | この仕事は何のために、どう進めるのか |
| 手順書 | 1つの作業 | はじめから終わりまでの順番 | この作業は何をどの順にやるのか |
| 操作マニュアル | 道具の使い方 | どの画面のどこを押すか | このシステムはどう操作するのか |
業務マニュアルの中に手順書が入り、手順書の中に操作の説明が入る、という入れ子の関係です。小さな会社では3つを1冊にまとめていることも多く、分けて作らなければいけない決まりはありません。
分けて考える利点は、作る順番が見えることです。先に業務マニュアルで全体の流れを決めておけば、手順書や操作マニュアルは「流れの中のこの部分」として1本ずつ足していけます。1つの作業の書き方は手順書の作り方に、システムの画面の書き方は操作マニュアルの作り方にまとめています。
業務マニュアルに載せること
載せる中身は、5W1Hで考えると抜けが減ります。
| 問い | 載せること | 例(請求業務) |
|---|---|---|
| なぜ(Why) | 仕事の目的、守らないとどうなるか | 入金が遅れると資金繰りに響く |
| 何を(What) | 作業の一覧、できあがるもの | 請求書、送付の記録 |
| 誰が(Who) | 担当、確かめる人、代わりの人 | 作成は総務、確認は上長 |
| いつ(When) | 締め切り、頻度、かかる時間 | 毎月1日〜5日、約半日 |
| どこで(Where) | 使うシステム、ファイルの置き場所 | 請求ソフト、共有フォルダ |
| どうやって(How) | 手順、判断の基準、注意 | 各作業のページ |
「なぜ」を書かない業務マニュアルは多くあります。目的が書いてあると、読む人は手順に書いていない場面でも、目的に合うほうを選べます。
業務マニュアルを作るメリット
業務マニュアルを作ると、次の5つが変わります。
- 1人しかできない仕事が減る。担当者が休んでも、ほかの人が進められます。いわゆる属人化の解消です
- 仕上がりが揃う。人によってやり方が違う状態がなくなり、ミスや抜けが減ります
- 教える時間が減る。新人や異動してきた人に、同じ説明をくり返さずに済みます。教わる側も、聞きにくいことを自分で調べられます
- 引き継ぎが短くなる。異動や退職のたびに一から資料を作らなくて済みます
- 仕事のムダが見える。流れを書き出すと、「この確認は2回やっている」「この転記は要らない」が見つかります
5つ目は見落とされがちです。業務マニュアルを作る作業は、そのまま業務の点検になります。書いていて説明に困る手順は、たいてい手順そのものがおかしい所です。
作る前に知っておきたい注意
よい面だけではありません。
- 作るのに時間がかかる。通常の仕事をしながら書くので、後回しになります。対策は、一度に全部を作らないことです。1つの業務から始めます
- 書いてあることしかやらなくなることがある。手順だけを書くとこうなります。目的と判断の基準を書いておけば、書いていない場面でも考えて動けます
- 古くなる。仕事のやり方は変わります。直す人と直すタイミングを決めずに配ると、いずれ画面や決まりと合わなくなります
3つとも、作り方と運用の決め方で小さくできます。この記事の手順は、この3つを避ける順番で組んでいます。
業務マニュアルは誰が作るか
書くのは、その業務をいまやっている担当者です。実際の流れ、例外、つまずく所を知っているのは担当者だけだからです。
ただし、担当者1人に任せきりにすると止まります。役を3つに分けます。

| 役 | 誰がやるか | やること |
|---|---|---|
| 書く人 | その業務の担当者 | 業務を洗い出し、中身を書く |
| 確かめる人 | その業務をやったことがない人 | マニュアルだけを見て実際にやってみる |
| まとめる人 | 上長、または部署の推進役 | 型・期限・置き場所を決め、書く時間を確保する |
まとめる人の仕事でいちばん大きいのは、書く時間を仕事として認めることです。「手が空いたときに書いておいて」では、手が空く日は来ません。「今週の木曜の午後は請求業務のマニュアルを書く」と予定に入れます。
何人かで分担して書くなら、型(見出しの並びと書き方の決まり)を先に配ります。型がないと、人によって細かさも言葉もばらばらになり、あとで揃える手間が大きくなります。
新人に書いてもらう方法もあります。教わったばかりの人は、どこで迷ったかを覚えています。新人が下書きを書き、担当者が直す、という組み合わせは、新人の理解の確認にもなります。
作る前に:どの業務から作るか、いつまでに作るか
最初の1本を選ぶ
全部の業務を一度にマニュアルにしようとすると、まず完成しません。最初の1本を選びます。

選ぶ基準は2つです。できる人が何人いるかと、止まるとどれだけ困るか。できる人が1人しかいなくて、止まるとお金や期限に響く業務が最初です。請求、給与、支払いがこれに当たることが多くなります。
次が、年に1回や月に1回しかやらない業務です。やった本人も次のときには忘れています。
残り時間に合わせて作り方を変える
いつまでに要るのかで、作り方は変わります。
| 残り時間 | 場面 | 作り方 |
|---|---|---|
| 1〜2週間 | 急な退職・異動の引き継ぎ | 全体の流れの図、締め切りの一覧、連絡先を先に書く。細かい手順は、実際に作業をしながら記録して残す |
| 1か月ほど | 新人の受け入れ、担当替え | 6つのステップを1つの業務で通す。試す時間を必ず取る |
| 3か月以上 | 部署全体の整備 | 型を決めてから分担する。毎月2〜3本ずつ増やす |
急ぎの引き継ぎでは、きれいな資料を作る時間はありません。後任が「いつ、何をやる必要があるのか」「困ったら誰に聞くのか」だけは分かるようにします。引き継ぎに絞った書き方は引き継ぎ資料の作り方で扱っています。
スケジュールの立て方
期限は、完成の日だけでなく途中にも置きます。1つの業務を1か月で作るなら、次のような配分になります。
| 週 | やること |
|---|---|
| 1週目 | 業務を洗い出す。範囲・読む人・目的を決める |
| 2週目 | 流れの図と目次を作る。型を決める |
| 3週目 | 中身を書く |
| 4週目 | やったことがない人に試してもらい、直して配る |
書く週は1週間しかありません。書く前の準備と、書いたあとの試しに半分以上を使います。月末や締め日の前後は通常の仕事で埋まるので、その週は避けて予定を組みます。
業務マニュアルの作り方:6つのステップ

ステップ1:業務を洗い出す
まず、いまやっている業務を全部書き出します。業務の棚卸しとも呼ばれます。
頭で思い出すだけでは抜けます。次の3つを見ながら書き出します。
- カレンダーと予定表:毎日・毎週・毎月・毎年の決まった仕事が見つかります
- 送信したメールとチャット:頼まれてやっている仕事、問い合わせへの対応が見つかります
- 共有フォルダのファイル:作っている書類から、仕事をたどれます
1〜2週間、やった仕事をその場でメモする方法も確実です。「電話を取る」「郵便を仕分ける」のような、仕事だと思っていない仕事が出てきます。
書き出したら表にします。

列は「業務」「頻度」「できる人」「止まると困る度」があれば足ります。この表から、最初に作る業務を1つ選びます。表そのものは、あとで業務マニュアルの「業務の一覧」としてそのまま使えます。
ステップ2:範囲・読む人・目的を決める
選んだ業務について、3つを決めます。
範囲は、どこからどこまでを書くかです。「請求業務」なら、売上の確定から入金の確認までなのか、請求書を送るところまでなのか。はじまりと終わりを1文で書きます。範囲を決めないと、書いているうちに隣の業務まで広がって終わらなくなります。
読む人は、1人に決めます。「来月入る、事務の経験はあるがこの会社のやり方は知らない人」のように具体的にします。読む人が決まると、どこまで細かく書くかが決まります。経験のある人が読むなら、Excelの使い方は要りません。
目的は、このマニュアルで何ができるようになるかです。「担当者が休んでも、ほかの人が5日までに請求書を送れる」のように、できるようになることを書きます。目的が決まると、載せるものと載せないものを選べます。
あわせて、どう使うかも決めておきます。画面で見るのか、印刷して机に置くのか。研修で最初から読むのか、作業の途中で開くのか。これで道具と構成が変わります。
決めたことは、マニュアルの「はじめに」にそのまま書きます。
ステップ3:流れの図と目次を作る
書き始める前に、骨組みを作ります。
先に作るのは全体の流れの図です。業務のはじまりから終わりまでを、5〜8個の箱に分けて並べます。箱には「いつ」「誰が」「何をする」を入れます。
図があると、読む人は自分がいまどこの作業をしているのかが分かります。書く人にとっては、箱の1つ1つがそのまま目次の項目になります。
図は凝らなくてかまいません。Wordなら「挿入」タブのSmartArtで流れの図を作れます(SmartArt でフロー チャートを作成する)。紙に手で書いて写真を貼っても役目は果たせます。
次に目次です。流れの順番に、作業の名前を並べます。名前は「請求書を作る」「上長に確認を頼む」のように、動詞で終えます。「請求書作成機能」「承認フロー」のような名詞だけの名前より、やることが伝わります。
ステップ4:型を決めて、1作業ずつ書く
目次ができたら中身を書きます。作業ごとに同じ型で書くと、書くほうも読むほうも楽になります。
1つの作業のページに入れる項目は次のとおりです。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 作業の名前 | 動詞で終える |
| 目的 | この作業を何のためにやるのか(1〜2文) |
| いつ・誰が | 締め切り、担当、かかる時間の目安 |
| 用意するもの | 使うシステム、ファイル、権限 |
| 手順 | 番号を付けて、1つずつ |
| 判断の基準 | 迷う所で、どちらを選ぶかの決まり |
| 注意 | 間違えやすい所、やってはいけないこと |
| できあがりの見本 | 完成した書類や画面 |
| 困ったとき | よくあるトラブルと対応、連絡先 |
書くときは、実際にその作業をやりながら書きます。机の上で思い出しながら書くと、体が覚えている手順が抜けます。
とくに抜けやすいのが判断の基準です。担当者は長年の勘で決めているので、判断していること自体に気づいていません。「金額がおかしい」と思うのは何を見ているからなのか。「急ぎ」とはどの取引先のことなのか。数字と条件にして書きます。
- 直す前:金額に問題がないか確認する
- 直したあと:前月の請求額と比べる。2割以上違うときは、営業担当に理由を確かめてから進む
ミスとトラブルの例も入れます。過去に実際に起きたことを、起きた場面のすぐ下に書きます。「宛名を旧社名のまま送ってしまった」「締め日を過ぎて気づいた」のような実例は、注意書きの文よりよく効きます。取引先からの苦情につながった例があれば、そのときの対応と、誰に報告するかも書いておきます。
期日と見本も忘れずに入れます。いつまでに終えるのか。できあがった書類はどういう形なのか。完成した見本が1枚あると、読む人は自分の仕上がりを見本と比べて確かめられます。
文の書き方の細かいコツはマニュアル作成のコツに、文字の大きさや余白の決め方は見やすいマニュアルのレイアウトにまとめています。ここでは、業務マニュアルで外せない3つだけ挙げます。
- 1文に入れる動作は1つにする
- 社内の略語や専門用語は、最初に出た所で説明する
- 「適宜」「必要に応じて」を使わない。いつ、どういうときなのかを書く
ステップ5:やったことがない人に試してもらう
書き終えたら、配る前に試します。
その業務をやったことがない人に、マニュアルだけを見て実際にやってもらいます。書いた人は横で見ているだけにして、口を出しません。
- 手が止まった所
- 聞きたそうにした所
- マニュアルと違うことをした所
この3つをメモします。手が止まった所は説明が足りない所です。違うことをした所は、書き方があいまいな所です。
月に1回の業務なら、次の回を試しに使います。担当者が横に付き、後任がマニュアルを見ながら進めます。これがいちばん確実な試し方で、そのまま引き継ぎにもなります。
上長にも読んでもらいます。見てもらうのは文の上手さではなく、判断の基準と承認の流れが会社の決まりと合っているかです。
ステップ6:置き場所と直す人を決めて、配る
最後に、3つを決めてから配ります。
- 置き場所:1か所にする。共有フォルダ、社内ポータル、チャットの固定メッセージなど、読む人がいつも開く所
- 直す人:人の名前ではなく役割で決める(「請求業務の主担当」)
- 見直す時期:年度の変わり目、システムの入れ替え、担当替えのとき
配るときは、ファイルを添付して送るより、置き場所のURLを知らせます。添付したファイルは各自の手元に残り、直しても古い版が使われ続けます。
運用の続け方は、あとの章「業務マニュアルが続かない理由と運用の決めごと」で詳しく書きます。
業務マニュアルの構成と目次の見本
1冊の構成は、次の6つの部分で組み立てます。

請求業務マニュアルなら、目次はこうなります(架空の会社の例です)。
- はじめに
- この資料の目的と対象の人
- 扱う範囲(売上の確定から入金の確認まで)
- 請求業務の全体
- 全体の流れの図
- 月間の予定(毎月1日〜月末)
- 関係する人と役割
- 作業ごとの説明
- 前月の売上を確かめる
- 請求書を作る
- 上長に確認を頼む
- 取引先へ送る
- 入金を確かめる
- 入金が無い取引先に連絡する
- 困ったとき
- 金額を間違えて送ったとき
- 取引先から再発行を頼まれたとき
- 請求ソフトにログインできないとき
- 資料
- 取引先ごとの送り方の一覧
- 用語の説明
- 連絡先
- 更新の記録
2の「全体」と、3の各ページにある「目的」「判断の基準」が、手順書との違いです。ここを省くと、手順書を束ねただけの資料になります。
Wordで作るなら、見出しのスタイルを使って書けば目次を自動で作れます(目次を挿入する)。ページが増えても目次を手で直さずに済みます。
この構成をそのまま使えるファイルが欲しいときは、マニュアル作成のテンプレートの記事にWord・Excelの型があります。
事務の仕事を例にした業務マニュアルの書き方
ここからは、事務の仕事を例に、実際の書き方を見ていきます。
事務の業務マニュアルで押さえる所
事務の仕事には、ほかの仕事と違う特徴があります。
- 締め切りで動く。毎月・毎年の決まった日があり、遅れると社内外に影響します。手順より先に、予定の一覧が要ります
- 例外が多い。「この取引先だけ郵送」「この人だけ締め日が違う」のような個別の決まりが、担当者の頭の中にあります
- システムと紙とExcelをまたぐ。1つの業務の中で、ソフトの画面、Excelの表、紙の書類を行き来します
- たまにしかやらない仕事がある。年末調整、年度の更新、算定の届け出など、年1回の仕事は毎回調べ直すことになりがちです
そのため、事務の業務マニュアルでは「予定の一覧」「例外の一覧」「画面の操作」の3つを厚く書きます。
例1:請求書の発行
まず全体の流れの図です。

このうち「請求書を作る」のページを、ステップ4の型で書くとこうなります。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 作業の名前 | 請求書を作る |
| 目的 | 前月分の代金を、取引先に正しい金額で請求する |
| いつ・誰が | 毎月3日まで。総務の請求担当。約2時間 |
| 用意するもの | 請求ソフトのアカウント、前月の売上一覧(共有フォルダ「請求/2026年/10月」) |
| 手順 | 1. 売上一覧を開く 2. 請求ソフトで取引先を選ぶ 3. 品目と数量を入力する 4. 合計を売上一覧と見比べる 5. 下書きで保存する |
| 判断の基準 | 前月の請求額と2割以上違うときは、営業担当に理由を確かめる。確かめるまで保存しない |
| 注意 | 社名が変わった取引先は、宛名を「資料:取引先ごとの送り方」で確かめる |
| できあがりの見本 | 共有フォルダ「請求/見本」の請求書 |
| 困ったとき | 取引先が請求ソフトに無いとき:営業担当に登録を頼む(総務は登録しない) |
手順の2〜5は請求ソフトの画面の操作です。ここは「どの画面のどこを押すか」を、スクリーンショット付きの操作マニュアルとして別に作り、このページからリンクします。業務マニュアルの表に画面の操作まで全部書くと、表が長くなりすぎて判断の基準が埋もれます。
例2:経費精算の確認
経費精算は、申請する人と確かめる人で読む所が違います。1冊にせず、2本に分けます。
- 申請する人向け:「経費を申請する」。全社員が読む。短く、画面中心
- 確かめる人向け:「経費の申請を確かめて支払う」。経理や総務が読む。判断の基準が中心
確かめる人向けのマニュアルで厚く書くのは、差し戻す基準です。
| 確かめること | 通す | 差し戻す |
|---|---|---|
| 領収書 | 日付・金額・支払先が読める | 読めない、申請と金額が違う |
| 申請の期限 | 使った月の翌月5日まで | 期限を過ぎている(上長の承認があれば通す) |
| 交通費 | 経路が訪問先と合っている | 訪問先の記入が無い |
| 金額 | 1件3万円未満 | 3万円以上で事前の申請が無い |
※金額や期限は、説明のための架空の決まりです。実際は自社の規程に合わせます。
基準を表にしておくと、確かめる人が替わっても判断が揃います。申請する人にも同じ表を見せれば、差し戻しそのものが減ります。
例3:来客と電話の受付
受付は、順番どおりに進まない仕事です。相手によって対応が分かれます。こういう仕事は、手順の番号より「こういうとき、こうする」の一覧が向いています。
| こういうとき | こうする |
|---|---|
| 約束のある来客 | 会議室へ案内し、担当者にチャットで知らせる |
| 約束のない来客(営業) | 名刺を預かる。担当者には取り次がない |
| 担当者が不在のときの電話 | 相手の社名・名前・用件・折り返しの番号を聞き、チャットで担当者に送る |
| 苦情の電話 | 話をさえぎらずに聞き、内容を記録する。その場で約束をせず、上長に代わる |
| 誰あてか分からない電話 | 用件を聞き、総務の主担当に回す |
受付のマニュアルには、言い方の見本も入れます。「ただいま席を外しております。戻りましたら折り返しお電話いたします」のような決まった言い方が書いてあれば、新人でも初日から電話を取れます。
経理・労務・採用の業務で足す項目
事務の中でも、分野によって足す項目が違います。
| 分野 | 足す項目 |
|---|---|
| 経理 | 月次・年次の締めの予定、勘定科目の選び方の基準、証ひょうの保管の決まり、承認の金額の区切り |
| 労務 | 入社・退社の手続きの一覧と提出先・期限、給与計算の締めと支払いの日、個人情報の扱い方 |
| 採用 | 応募から入社までの流れ、応募者への連絡の文面の見本、面接の評価の基準、日程の決め方 |
| 総務・秘書 | 年間の行事の予定、備品や契約の更新の時期、社内外の連絡先、予定の調整の優先順位 |
労務や経理の業務には、法律で決まっている期限や保管の決まりが関わるものがあります。マニュアルに書くときは、所管の役所の案内や顧問の専門家に確かめ、確かめた日を書いておきます。制度は変わるので、記憶で書かないようにします。
派遣社員やアルバイトなど、短い期間で入れ替わる人が担当する業務では、初日に読む所を1ページにまとめた「最初の1日」を先頭に置きます。座席、ログインのしかた、最初にやる仕事、質問する相手が分かれば、受け入れる側の説明も短くなります。
業務マニュアルは何で作るか
道具は、中身の種類と、直しやすさで選びます。
| 道具 | 向いている中身 | 気をつける所 |
|---|---|---|
| Word | 文章が多い資料。目次を自動で作れる。印刷に強い | 画像や図の位置がずれやすい |
| Excel | 業務の一覧、予定表、基準の表、チェック表 | 文章が長いと読みにくい。印刷で切れやすい |
| PowerPoint | 流れの図、1ページ1作業の資料。研修で映す資料 | ページが増えると探しにくい |
| Googleドキュメント・スライド | 何人かで同時に書く。URLで配る | 細かいレイアウトは苦手 |
| マニュアル作成の専用ツール | 画面の操作を記録して自動で作る。検索や更新の管理 | 道具によって得意な範囲が違う |
| 動画 | 動き、機械の扱い、接客の所作 | 途中の1か所を探しにくい。直すには撮り直す |
1冊を1つの道具で作る必要はありません。本体をWordかGoogleドキュメントで書き、予定表と基準の表はExcel、画面の操作は専用ツール、という組み合わせが現実的です。エクセルで作る場合のシートの分け方は、エクセルでのマニュアルの作り方で説明しています。
道具を選ぶときに見る所は3つです。
- 直しやすいか。直すのに専用のソフトや特別な技術が要ると、直されなくなります
- 読む場所で開けるか。現場でスマートフォンから読むなら、スマートフォンで読める形にします
- 見せる相手を絞れるか。給与や個人情報に関わるマニュアルは、読める人を限る必要があります
Googleドキュメントは、いつ誰が何を変えたかを版の履歴で確かめられ、前の版に戻すこともできます(ファイルの変更内容を確認する)。何人かで直す資料には、この仕組みが役に立ちます。
テンプレートを使えば、表紙や見出しの形を決める時間は省けます。省けるのは形を決める時間で、中身の判断の基準や注意は自分たちで書くことになります。
文章と動画の使い分け
動画が向いているのは、文章と写真では伝わらない動きです。機械の扱い方、荷物の持ち方、接客の受け答えなどです。
事務の業務マニュアルでは、文章が主になります。作業の途中で開き、いまやっている1か所を確かめるという読み方をするからです。動画だと、その1か所を探すのに再生し直すことになります。判断の基準や金額の区切りも、動画より表のほうが確かめやすくなります。
画面の操作を動画で残す会社もあります。直しやすさを考えると、1ステップずつ読める形にしておき、動きが要る所だけ動画を添えるほうが続きます。
生成AIは使えるか
文章の下書きや、言い回しの整理には使えます。箇条書きのメモを渡して読みやすい文にしてもらう、目次の案を出してもらう、といった使い方です。
気をつける所は2つあります。1つは、AIは自社の決まりを知らないことです。もっともらしい手順や基準を書いてくることがあるので、中身は担当者が必ず確かめます。もう1つは、社外に出せない情報の扱いです。取引先の名前や個人情報を入力してよいかは、会社の決まりを先に確かめます。
業務マニュアルの中の「画面の操作」は、操作を記録して作る
事務の業務マニュアルを書いていて、いちばん時間がかかるのが画面の操作の部分です。画面を撮り、貼り、押す場所に印を付け、説明を書く。これをステップの数だけくり返します。
ブラウザで開くシステムの操作なら、この部分を道具に任せられます。ReQuill は、Chromeに追加して使う無料の拡張機能です。記録を始める、いつも通りに操作する、記録を止める。これでスクリーンショットと説明文の入ったマニュアルができます。
実例:月次の報告に使う数字をダッシュボードから取り出す
「毎月はじめに、先月の職員別の稼働率をCSVで取り出して報告の資料にする」という業務を例にします。業務マニュアルの中では、流れの図の1つの箱に当たる作業です。
経営ダッシュボードのサンプル画面(数字も名前も架空のデータ)で、この操作を記録しました。やった操作は「職員別」のタブを開く、期間を「先月」にする、職種を「看護」に絞る、「CSVダウンロード」を押す、の4つです。
記録を止めると、次のステップができました。画像には手を加えていません。





各ステップには、スクリーンショット、押した場所の拡大と印、説明文、画面全体のどこなのかを示す小さな図が入ります。表紙の題名と概要はAIが下書きします。
業務マニュアルとして足す所
できたものは「どこを押すか」の説明です。業務マニュアルにするには、人が足す所があります。
- なぜ「先月」で「看護」なのか。月次の報告の決まりに当たる所です。編集の画面の「補足を追加」で、そのステップに書き足します
- いつまでに、誰に渡すのか。締め切りと渡す相手は、業務マニュアルの本体に書きます
- 数字がおかしいと思ったときの基準。これも本体の「判断の基準」に書きます
- 写ってはいけないものが写っていないか。本物のデータで記録したときは、「隠す」で範囲を選んで塗りつぶします。架空のデータで記録できるなら、そのほうが楽です
編集では、説明文の修正、ステップの削除と並べ替えもできます。できたマニュアルはURLで共有でき、受け取った人は登録なしで読めます。PDFにもできるので、業務マニュアルの本体からURLでリンクする使い方と、PDFを本体と同じフォルダに置く使い方のどちらもできます。
記録できるのは、パソコンのChromeで開く画面だけです。デスクトップのアプリ、機械、紙の作業は記録できません。その部分は、写真と文で書きます。
業務マニュアルが続かない理由と運用の決めごと
作ったのに使われなくなる。業務マニュアルではよくあることです。理由は4つに分けられます。
| 理由 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 完璧を目指して完成しない | 全部の業務を1冊にしようとして、半年たっても配れない | 1つの業務で配る。7割の出来で試しに出す |
| 作る目的が伝わっていない | 書く人が「やらされ仕事」と感じ、中身が薄くなる | 誰が何に困っているのかを最初に共有する |
| どこにあるか分からない | 探すより人に聞くほうが早くなる | 置き場所を1つにし、名前の付け方を揃える |
| 古いまま直されない | 画面や決まりが変わり、1回で信用を失う | 直す人と見直す時期を決める |
置き場所を1つにする
探すのに手間がかかるマニュアルは開かれません。人に聞くほうが早いからです。
- 置き場所は1か所。個人のパソコンやメールの添付に置かない
- ファイルの名前は「業務の名前+マニュアル」で揃える(例:「請求業務マニュアル」)
- 古い版は別のフォルダに移す。同じ場所に「最新」「最新2」「確定」を並べない
- 業務の一覧表を入口にして、そこから各マニュアルを開けるようにする
ステップ1で作った洗い出しの表が、そのまま入口になります。「マニュアルあり・なし」の列を足せば、どの業務がまだなのかも分かります。
見直す時期を決める
「気づいたら直す」だけでは直されません。見直す時期を予定に入れます。
- 年度の変わり目(年に1回、全部を通して読む)
- システムを入れ替えたとき、画面が変わったとき
- 担当が替わったとき(後任が使ってみて、違う所を直す)
- 決まりや書式が変わったとき
表紙に更新日を入れておきます。読む人は、更新日が2年前なら「古いかもしれない」と気をつけて読めます。
気づいた人が言える仕組みを作る
マニュアルの間違いに最初に気づくのは、使っている人です。その人が言いやすい道を作ります。

- 「マニュアルの直してほしい所」を書くチャットのスレッドや表を1つ作る
- Googleドキュメントなら、気づいた所にコメントを付けてもらう
- 直したら、何を変えたかをチャットで知らせる
質問への答え方も変えます。口で答えずに、マニュアルの場所を伝えます。書いていない質問なら、答えたあとでマニュアルに足します。これを続けると、「分からないことはまずマニュアルを見る」が習慣になります。
変えたときの決めごと
- 変えたら知らせる。直しただけでは、古いやり方が続きます。何がどう変わったかを1〜2行で伝えます
- 更新の記録を残す。日付、変えた所、変えた人をマニュアルの最後に書きます
- 元のファイルを残す。PDFだけ残して元のWordやExcelをなくすと、次に直せません。元のファイルの置き場所も決めておきます
役に立っているかを確かめる
作って終わりにしないために、効果を確かめます。数える方法と、聞く方法があります。
- 数える:同じ質問を受けた回数、差し戻しやミスの件数、新人が1人でできるようになるまでの日数、担当者以外がその業務をやれた回数
- 聞く:使った人に「どこで迷ったか」「足りなかった所はどこか」を聞く
作る前の数字を控えておくと、作ったあとと比べられます。いちばん分かりやすいのは、担当者が休んだ日に、その業務が進んだかどうかです。
自分たちで作るか、外に頼むか
業務マニュアルの作成を引き受ける会社もあります。聞き取りから構成、執筆までを任せられます。部署をまたぐ大きな業務を短い期間で整えたいときや、社内に書く時間がまったく取れないときは、選択肢になります。
頼むときに知っておくことが2つあります。業務の中身を話すのは、結局は担当者です。聞き取りの時間は社内でかかります。そして、できあがったあとに直すのは自分たちです。直せる形(社内で使っている道具のファイル)で受け取れるかを先に確かめます。
日々の事務の業務マニュアルは、自分たちで作るほうが合っています。やり方が変わるたびに直す必要があり、直せるのはその仕事を知っている人だからです。
作り始める前のチェックリスト
書き始める前に、次の項目が埋まっているかを確かめます。埋まっていない項目があるなら、書く前にそこを決めます。
- 最初に作る業務を1つに絞った
- その業務の範囲(どこからどこまで)を1文で書ける
- 読む人を1人、具体的に思い浮かべられる
- このマニュアルで何ができるようになるかを1文で書ける
- 書く人、確かめる人、まとめる人が決まっている
- 書く時間を予定に入れた
- 完成の日と、途中の区切りの日を決めた
- 使う道具と、1作業のページの型を決めた
- 置き場所を決めた
- 配ったあとに直す人を決めた
10項目のうち、いちばん飛ばされやすいのは「書く時間を予定に入れた」です。ここが空いたまま始めると、ほかの9つが決まっていても進みません。
よくある質問
業務マニュアルは誰が作るのですか
書くのは、その業務をいまやっている担当者です。実際の流れや例外を知っているのは担当者だからです。ただし1人に任せきりにせず、やったことがない人が試し、上長や推進役が型と期限と置き場所を決めます。この3つの役が揃うと、完成までたどり着きやすくなります。
業務マニュアルは何で作ればいいですか
文章が中心ならWordかGoogleドキュメント、一覧や基準の表はExcel、流れの図や研修の資料はPowerPointが向いています。1つに決める必要はありません。本体をWordで書き、表はExcel、画面の操作は専用ツール、という組み合わせで足ります。選ぶときは、社内の誰もが直せる道具かどうかを先に見ます。
無料でマニュアルが作れるツールはありますか
Googleドキュメントやスライドは、Googleアカウントがあれば費用をかけずに使えます。画面の操作の部分は、パソコンに入っているスクリーンショットの機能で撮って貼れます。操作を記録して自動で作る道具にも、無料で使えるものがあります。ReQuillは、記録・編集・共有・PDFが無料で、カードの登録も要りません。
マニュアル作りが上手い人の特徴は何ですか
読む人を1人に決めてから書いています。自分が判断している所を、数字と条件にして書き出せます。そして、書いたあとに必ずほかの人に試してもらい、言われた所を直します。文章の上手さより、この3つの差が大きく出ます。
業務マニュアルを作るのに、どれくらい時間がかかりますか
業務の大きさと、書く人が使える時間で大きく変わるので、決まった数字はありません。月に1回の事務の業務を1つ、通常の仕事と並行して作るなら、準備・執筆・試しを合わせて1か月を見ておくと無理がありません。試しを次の回の実際の作業でやれば、追加の時間は小さくなります。
業務マニュアルと事務マニュアルは違うものですか
事務マニュアルは、業務マニュアルのうち事務の仕事を扱うものです。作り方は同じです。事務は締め切りと例外が多く、システムと紙とExcelをまたぐので、予定の一覧、例外の一覧、画面の操作を厚く書く、という違いがあります。
テンプレートを使ったほうがよいですか
型が決まっていないなら、使ったほうが早く始められます。表紙や見出しの並びを考える時間が省け、何人かで書いても形が揃います。ただし、中身の判断の基準や注意は、どのテンプレートを使っても自分たちで書くことになります。項目が自社の業務に合わない所は、消したり足したりして使います。
作ったのに読まれません。どうすればよいですか
まず置き場所を見直します。探すより人に聞くほうが早い状態だと、読まれません。次に、長すぎないかを見ます。1冊にまとめず、業務ごと・作業ごとに分けます。そのうえで、質問にはマニュアルの場所で答えるようにします。古い所が1つでも見つかると信用を失うので、言われたその週に直します。
業務の手順を抜けなく洗い出すコツはありますか
思い出して書かず、実際にやりながら書きます。カレンダー、送信したメール、共有フォルダのファイルを見返すと、忘れていた仕事が出てきます。1〜2週間、やった仕事をその場でメモする方法も確実です。最後に、やったことがない人に試してもらえば、残った抜けが見つかります。
小さな会社でも業務マニュアルは必要ですか
人数が少ないほど、1人しかできない仕事が多くなります。その人が休むと仕事が止まるので、必要さはむしろ大きくなります。立派な1冊は要りません。「できる人が1人で、止まると困る業務」を1つ選び、流れの図と締め切り、連絡先の1ページから始めれば十分に役立ちます。