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緊急対応マニュアルのテンプレート|Word・Excelの無料の型と記入例、作り方6ステップ

榎本 諒 ・ 更新 2026-10-23 ・ 約26分で読めます

火事が起きた。地震が来た。同僚が倒れた。そのとき、誰が何をするのか決まっていない。「緊急対応マニュアルを作っておいて」と言われて、「緊急対応マニュアル テンプレート」と検索した。この記事は、そういう人に向けて書いています。

緊急対応マニュアルは、ふつうのマニュアルと使われ方が違います。読む人は、焦っています。長い文章は読まれません。だから最初の数行で動けることと、誰が何をするかが決まっていることが、出来を決めます。

先にテンプレートを配ります。そのあとで、緊急対応マニュアルとは何か、危機管理マニュアルやBCPとの違い、載せる項目、記入例、職場別に足す項目、作り方、形だけにしないコツを順に説明します。

緊急対応マニュアルのテンプレート(Word・Excel、無料)

WordとExcelの2つの形式で用意しました。中身の章は同じです。会員登録は要りません。社内で自由に書き換えて使ってください。

どちらにも、次のものが入っています。

  • 使い方の説明
  • 8つの章(目的と対象、緊急度のレベル、最初の5つの動き、体制と役割、事態ごとの対応カード、連絡先と知らせる順番、備えの点検、訓練と更新の記録)
  • 社員25名の事務所を例にした記入例(架空の内容)

印刷はA4横で、表の見出しの行が全ページに入る設定にしてあります。書き方のヒントは青い文字にしてあります。自分の職場の内容で上書きするか、消してください。書き終えたら、使い方と記入例のページは消して構いません。

このテンプレートは書き方の型です。消防計画の作成や防火管理者の選任のように、法令で決まっている手続きの代わりにはなりません。この点は、後ろの「法令で決まっていること」で説明します。

緊急対応マニュアルとは

緊急対応マニュアルは、緊急事態が起きた直後に、人の安全を守り、被害を広げないための動き方を決めた資料です。

目的は「立派な計画書を作ること」ではありません。起きた瞬間に、そこにいる誰もが、迷わず最初の一手を打てることです。

呼び方がいくつもある:危機管理・災害対応・初動対応・BCPとの違い

緊急対応マニュアルは起きた直後の動き方、危機管理マニュアルは事前と事後を含む広い資料、災害対応マニュアルは災害に絞った資料、BCPは止まった事業を続け戻す計画

検索すると、似た名前の資料がたくさん出てきます。違いは、どの場面を中心に書くかです。

中心に書くこと例
緊急対応マニュアル(緊急時対応マニュアル)起きた直後の動き方。命と安全、通報、連絡火災が起きたときの最初の3つの動き
初動対応マニュアル緊急対応のうち、最初の数時間の動き対策本部を立ち上げ、安否を確認する
危機管理マニュアル不祥事・事故・災害など、事前の備えと事後の対応まで含む情報漏えいが起きたときの公表の決まり
災害対応マニュアル地震・水害など、災害に絞った動き方地震の揺れが収まったあとの避難
BCP(事業継続計画)止まった事業を、どう続け、どう戻すか本社が使えない間、どこで何を再開するか

実際には、会社によって同じ言葉が違う範囲で使われています。大事なのは名前ではなく、自分の職場が何を決めておきたいのかです。命と安全を守る最初の動きを決めたいなら、緊急対応マニュアルです。事業を止めない・戻すところまで決めたいなら、BCPが要ります。

BCPについては、内閣府が事業継続ガイドラインを公開しています。中小企業向けには、中小企業庁が自然災害などの備えを計画にして国が認定する事業継続力強化計画の制度を案内しています。まず緊急対応マニュアルで初動を決め、次にBCPへ広げる、という順で進めると、作業が重くなりすぎません。

緊急対応マニュアルがあると何が変わるか

  • 最初の1分で迷わない:誰が119番をかけ、誰が逃げ遅れを見るかが決まっています
  • 人によって動きがばらつかない:新人でも、ベテランと同じ最初の一手を打てます
  • 判断が早くなる:緊急度のレベルが決まっていれば、本部を立ち上げるかどうかで時間を使いません
  • あとから振り返れる:記録の取り方が決まっているので、何が起きて何をしたかが残ります
  • 訓練ができる:書いてあるからこそ、「この通りに動けるか」を試せます

通常の業務の手順も一緒に整理したいときは、運用マニュアルのテンプレートも使えます。運用マニュアルの「異常時の対応」の章を、緊急のときの動き方として独立させたものが、この記事の緊急対応マニュアルだと考えると分かりやすくなります。

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緊急対応マニュアルに載せる8つの項目

緊急対応マニュアルの型。目的と対象、レベル、最初の5つの動き、体制、対応カード、連絡先、備えの点検、訓練と更新の8つの章

テンプレートの章は、次の8つです。

章中身要るかどうか
1 目的と対象何を守る資料か、対象の場所、扱う事態、扱わないこと、置き場所必ず
2 緊急度のレベルと判断レベルの定義、例、まずやること、本部を立ち上げるか必ず
3 最初の5つの動きどの事態でも共通の動き。各部屋に貼る1ページ必ず
4 体制と役割役割、担当、代わりの人、やること必ず
5 事態ごとの対応カード事態別の最初の3つの動き、知らせる相手、やってはいけないこと必ず
6 連絡先と知らせる順番順番、相手、手段、受け付ける時間、伝えること必ず
7 備えの点検避難経路、消火器、AED、備蓄などの場所と点検日設備があるなら
8 訓練と更新の記録訓練の結果、直すこと、版と変えた所長く使うなら

ほかのマニュアルと比べて特徴的なのは、2のレベル、3の最初の5つの動き、5の対応カードです。ここが薄いと、緊急対応マニュアルではなく、ただの注意書きになります。

通常の業務マニュアルの型と比べたいときは、マニュアル作成のテンプレートで配っているWord・Excel・PowerPointの型を見てください。

テンプレートの中身と記入例

ここからは、テンプレートの章を1つずつ、記入例とあわせて説明します。例は、社員25名の事務所(ビルの3階)です。内容はすべて架空です。

1 目的と対象

最初のページで、この資料が何を守るためのものかをはっきりさせます。

項目記入例
対象の場所・仕事本社事務所(ビルの3階。社員25名、来客が1日に数名)
この資料の目的緊急のとき、まず人の命と安全を守る。そのうえで業務を止める範囲を小さくする
対象にする緊急事態火災、地震、急病・けが、停電とシステム停止、不審者、情報の漏えい
扱わないこと事業の再開の計画(BCP)、感染症の対応、顧客へのお詫びの文面
この資料を読む人全社員(緊急のとき)、本部長と各係(訓練のとき)
置き場所紙:各部屋の入口横とリーダーのかばん。データ:共有フォルダとスマホ

「扱わないこと」を書くのがコツです。書いておかないと、あれもこれもと入ってきて、緊急のときに開く所が埋もれます。置き場所も忘れずに書きます。停電やネットワークの障害では、共有フォルダが開けません。紙で持つ場所を決めておきます。

2 緊急度のレベルと判断

緊急度は3つのレベルで決める。レベル3は命にかかわる、レベル2は業務が止まる、レベル1は様子を見ながら備える

緊急事態が起きたとき、最初に迷うのは「どれくらい大事なのか」です。レベルを先に決めておくと、迷う時間が減ります。

レベル状態例まずやること本部を立ち上げるか
3 緊急命にかかわる、またはかかわるおそれがある火災、大きな地震、意識がない人がいる避難する、119番、人の安全を最優先にする立ち上げる(全員に知らせる)
2 重大命は無事だが、業務が止まる・情報が出るおそれがある半日以上の停電、システムが使えない、情報の誤送信業務を止める範囲を決める、責任者に知らせる立ち上げる(関係者だけ)
1 注意様子を見ながら備える台風の接近、不審な電話、軽いけが状況を記録する、責任者に知らせる立ち上げない(係が動く)

レベルは3つまでにします。5段階にすると、どれに当たるかで迷います。迷ったら高いほうに倒すと決めておき、下げるのは本部長が決める、とします。

3 最初の5つの動き

どの事態でも共通の、最初の5つの動き。命を守る、安全を確かめる、通報する、責任者に知らせる、記録する

この章が、緊急対応マニュアルの顔です。事態が何であっても、最初にやる動きは共通です。1ページに収めて、各部屋に貼ります。

順番動き誰でもできる言い方目安の時間
1命を守る身の安全を確保し、そばの人に声をかける最初の1分
2安全を確かめる火・煙・倒れそうな物・けが人がいないか見る〜3分
3通報する必要なら119番・110番。場所と何が起きたかを伝える〜5分
4責任者に知らせる決めた連絡先に、事実だけを短く知らせる〜10分
5記録を残す時刻・見たこと・やったことを書く落ち着いてから

順番を変えないことが大事です。1と2の前に、上司への報告や書類の片づけをしてはいけません。

通報の仕方も決めておきます。総務省消防庁の119番緊急通報の案内では、通報すると、まず火事か救急かを聞かれ、住所や目印、何が起きているかを順に確認されます。住所が分からないときは、近くの大きな建物や交差点など、目印になるものを伝えます。電話のそばに、住所・建物名・目印を書いたメモを貼っておくと、焦っていても伝えられます。

4 体制と役割

体制は5つの役割。本部長、連絡係、避難誘導係、救護係、記録係
役割担当代わりの人やること
本部長総務課長管理部長緊急度を決める。避難・業務停止の判断。外部への発表の承認
連絡係総務 担当A総務 担当B社内への一斉連絡。外部(管理会社・提供会社)への連絡
避難誘導係各部屋のリーダーその部屋の最年長全員の避難を促す。逃げ遅れがないか部屋を見る
救護係総務 担当B営業 担当C応急手当。119番の通報。AEDを持ってくる
記録係総務 担当C総務 担当A時刻・判断・連絡を時系列で書く。安否の一覧を作る

人の名前だけで書くと、異動のたびに古くなります。役割で書いて、担当の欄に今の人を入れます。代わりの人の欄を空けないことが大事です。緊急事態は、担当が休みの日にも起きます。

小さな職場で5つの役割を埋められないときは、兼ねて構いません。ただし「判断する人(本部長)」と「記録する人」は分けます。判断する人が、同時に記録は取れないからです。

5 事態ごとの対応カード

緊急対応マニュアルの本体です。事態ごとに、最初の3つの動きだけを書いたカードを作ります。

対応カードの例。火災のカードに、最初の3つの動きと、やってはいけないことを書く
事態まずやること(最初の3つ)知らせる相手やってはいけないこと終わったあとにやること
火災①「火事だ」と声を出す ②小さな火なら消火器、無理なら避難 ③避難してから119番本部長→全員エレベーターを使う、荷物を取りに戻る集合場所で人数を確かめる。消防の指示に従う
地震①机の下に入り頭を守る ②揺れが収まったら火と出口を確かめる ③建物が危なければ外へ本部長→全員揺れている間に外へ走り出す安否を確認する。建物の点検が済むまで戻らない
急病・けが①意識と呼吸を見る ②119番を頼み、AEDを持ってこさせる ③そばを離れない救護係→本部長自己判断で動かす、飲み物を与える救急隊に経過を伝える。家族への連絡は本部長が決める
停電・システム停止①機器の電源を落とさず状況を見る ②提供会社の障害情報を見る ③紙の手順に切り替える連絡係→本部長原因が分からないまま再起動をくり返す復旧後にデータが合うか確かめる。原因を記録する
不審者①相手を刺激せず距離を取る ②周りの人に合図し複数で対応 ③危険なら110番本部長一人で対応する、追いかける特徴と時刻を記録する。入館の決まりを見直す
情報の漏えい①誤送信は取り消せるか見る ②誰が・何を・誰に送ったかを書き出す ③責任者に知らせる連絡係→本部長自分だけで謝罪して終わらせる範囲を確かめ、必要なら本人と関係先に知らせる

カードを書くときの決まりは3つです。

  1. 最初の3つで止める:4つ目以降を書くと、緊急のときに読まれません。細かい説明は、裏面か別の資料に回します
  2. 「やってはいけないこと」を必ず書く:焦ったときにやりがちなことです。エレベーターを使う、荷物を取りに戻る、のような行動が、被害を広げます
  3. 動詞で終える:「火災への対応」ではなく「小さな火なら消火器、無理なら避難」と書きます

事態の数は、最初は3〜5つで十分です。「起きる可能性が高い」ものと、「起きると取り返しがつかない」ものから選びます。増やすのは、訓練で足りないと分かってからです。

6 連絡先と知らせる順番

順番相手手段受け付ける時間伝えること
1119番(火事・救急)電話24時間火事か救急か、場所(住所・建物名)、何が起きたか、名前と電話番号
2本部長(総務課長)電話・チャット24時間(夜間は電話)何が・いつ・どこで・何人に影響があるか
3建物の管理会社電話(緊急用)24時間場所、状況、設備の異常の有無
4システムの提供会社問い合わせフォーム提供会社の案内のとおり契約の番号、画面のエラー、起きた時刻
5社員の緊急連絡網チャット+電話24時間安否の確認、出社の可否、次の連絡の時刻

連絡先は、いちばん古くなりやすい所です。電話番号は、月に1回、実際にかけられるかを確かめる日を決めます。伝える内容は「何が・いつ・どこで・何人に影響があるか」の4つに揃えると、受ける側が状況をつかめます。

社員の緊急連絡網には個人情報が入ります。印刷して配るときは、保管の場所と、退職・異動のときの回収と更新を決めておきます。

7 備えの点検

項目内容置き場所点検する人点検の頻度
避難経路図非常口までの道を示す図。部屋ごとに貼る各部屋の入口総務 担当A半年
集合場所ビルの外の決められた場所図に記載総務 担当A半年
消火器本数・使用期限・圧力計の針廊下と給湯室総務 担当B半年
AED設置の場所・パッドと電池の期限受付の横総務 担当B半年
備蓄水・食料・ライト・簡易トイレ・救急セット3階の倉庫総務 担当C半年
緊急連絡網社員の連絡先。異動・入退社のたびに更新共有フォルダと紙総務 担当A月1回

「最後に見た日」の列を付けると、点検が止まったものが目で分かります。備えは、あるだけでは動きません。消火器の場所を誰も知らない、AEDの電池が切れている、ということが起こり得ます。

8 訓練と更新の記録

日付訓練の種類参加した人うまくいったこと直すこと
2026/04/10避難訓練(火災の想定)22名全員が3分で集合場所に着いた来客の誘導役が決まっていなかった
2026/07/08机上訓練(停電・システム停止)6名紙の手順への切り替えが言えた提供会社の連絡先が古かった
2026/10/07安否確認の訓練(チャット)24名15分で全員の返信がそろった返信の書き方が人によって違った

訓練のたびに、「直すこと」を1つ以上書きます。直したら、更新の記録に1行足します。これが、マニュアルが古くならない仕組みです。

職場に合わせて足す項目

職場ごとに足す項目。事務所、店舗、工場・倉庫、介護・福祉

共通の「最初の5つの動き」は、どの職場でも同じです。職場ごとに足すのは、対応カードの行と、体制の役割です。

職場足す項目の例
事務所来客の誘導、データの保全(バックアップの場所)、在宅勤務者の安否
店舗お客様の誘導、レジと現金の扱い、クレーム・迷惑行為への対応、閉店後の連絡
工場・倉庫機械の緊急停止、薬品・火気の扱い、作業中のけが、保護具
介護・福祉利用者の避難の順番と方法、夜間の職員の人数、家族への連絡、服薬・医療機器の扱い

職場によっては、法令で決まっている手続きもあります。

法令で決まっていること:消防計画と防火管理者

ここは、テンプレートで代えられない所です。総務省消防庁の防火管理制度の説明によると、消防法は、多数の人を収容する防火対象物の管理について権原を持つ人に、防火管理者を選任することと、消火・通報・避難の訓練などを定めた消防計画を作ることを義務付けています。

どの建物が対象になるかは、建物の用途と、そこに出入りして勤務する人の数で決まります。人数の基準は用途で違います。自分の職場が対象かどうかは、管轄の消防署に確かめるのがいちばん確実です。

対象になる職場は、消防計画の中に、避難や通報の訓練を入れる必要があります。この記事のテンプレートの「最初の5つの動き」「対応カード」「備えの点検」「訓練の記録」は、消防計画を作るときの下書きや、日々の運用の資料として使えます。ただし、消防計画の届出の書式そのものではありません。

作り方:6つのステップ

ステップ1:対象の場所と、扱う事態を決める

最初に決めるのは、どこの、どんな緊急事態を扱うかです。「全部」にすると、何も書けません。

次の2つの質問に答えて、事態を3〜5つ選びます。

  1. この職場で、起きる可能性が高いことは何か(停電、軽いけが、誤送信)
  2. この職場で、起きると取り返しがつかないことは何か(火災、大きな地震、急病で意識がない)

国土交通省のハザードマップポータルサイトで、職場の場所の浸水や土砂災害のおそれを見ておくと、水害を入れるべきかが分かります。

ステップ2:緊急度のレベルを決める

レベルを3つに決めます。それぞれの例を、自分の職場の事態で書きます。迷ったら高いほうに倒す、というルールもここで決めます。

ステップ3:最初の5つの動きと、体制を決める

共通の5つの動きを、自分の職場の言葉に直します。そのうえで、5つの役割の担当と代わりの人を決めます。代わりの人が決まらない役割が見つかったら、それが今いちばんの弱点です。

ステップ4:事態ごとの対応カードを書く

選んだ事態ごとに、最初の3つの動き、知らせる相手、やってはいけないことを書きます。書けないときは、次の質問に答えてみてください。

  1. その事態に気づくのは、誰が、どんな形でか
  2. 最初に、何をしてはいけないか
  3. 119番や110番を呼ぶ基準は何か
  4. 誰に、どの順で知らせるか
  5. 「もう大丈夫」と言えるのは、どういう状態か

答えが人によって違うなら、それが、決めておく必要があることです。

ステップ5:連絡先と備えをそろえる

連絡先に、実際にかけて番号が合っているかを確かめます。避難経路、消火器、AED、備蓄の場所を、図に書いて貼ります。「あるはず」ではなく、実際に見に行って確かめます。

ステップ6:訓練して、直す

書いた本人は、抜けに気づけません。訓練で、書いてある通りに動けるかを試します。

形だけにしない、15分の机上訓練。事態を決める、状況を読む、マニュアルだけで動く、詰まった所を書く、直す

おすすめは、15分の机上訓練です。会議室に集まって、事態を1つだけ決め、「朝9時、突然全部の画面が消えた」のように状況を読み上げます。そして、マニュアルだけを見て、誰が何をするかを順に言ってもらいます。詰まった所、連絡先が古かった所が、そのまま直す所です。

机上訓練なら、場所も大きな時間もいらないので、続けやすい訓練です。避難訓練と組み合わせて、続ける頻度を職場で決めます。

形だけにしない7つのコツ

1. 最初のページは、1ページに収める

緊急のときに全部は読めません。最初の5つの動きは1ページ、対応カードは1事態1ページにします。

2. 数字と時刻で書く

「早めに」「速やかに」ではなく、「3分以内に集合」「10分以内に責任者へ」。動きの基準が分かります。

3. 専門用語を使わない

「初動」「トリアージ」のような言葉は、新人が分かりません。「最初の動き」「手当の順番を決める」のように、誰でも分かる言葉で書きます。

4. 紙とデータの両方で持つ

停電やネットワーク障害のときは、データが開けません。最初の5つの動きと連絡先は、紙でも持ちます。

5. 連絡先は月に1回かけて確かめる

古い連絡先は、緊急のときに何も役に立ちません。月に1回、確認の日を決めます。

6. 訓練で詰まった所を、そのままマニュアルに戻す

訓練の結果を、更新の記録に1行足します。マニュアルが、現場の動きに追いついていきます。

7. 入社した日に読んでもらう

新しく入った人は、非常口の場所も、集合場所も知りません。入社の初日に、最初の5つの動きと避難経路を説明します。

新しい人に渡す資料の作り方は、新人教育マニュアルの作り方でも説明しています。

緊急のときにも使う、画面の操作を記録して残す

緊急対応マニュアルの中には、画面の操作が入る所があります。たとえば次のような作業です。

  • システムが止まる前に、いまのデータをCSVで書き出しておく
  • 退職者や紛失した端末のアカウントを止める
  • 提供会社の障害情報のページを開く
  • 一斉連絡のチャットを送る

こうした操作は、文章で書くより、画面と一緒に残すほうが確実です。ただ、画面を撮り、貼り、押す場所に印を付ける作業は、ステップの数だけ手間がかかります。

ブラウザで開くシステムの操作なら、この部分を道具に任せられます。ReQuill は、Chromeに追加して使う無料の拡張機能です。記録を始める、いつも通りに操作する、記録を止める。これでスクリーンショットと説明文の入ったマニュアルができます。

実例:「データをCSVで書き出す」操作を記録した結果

備えの作業の例として、経営ダッシュボードのサンプル画面(数字も名前も架空のデータ)で、「先月の職員別のデータをCSVで書き出す」操作を記録しました。やった操作は、「職員別」のタブを開く、期間を「先月」にする、職種を「看護」に絞る、「CSVダウンロード」を押す、の4つです。

記録を止めると、次のステップができました。画像には手を加えていません。緊急のときに限らず、手元にデータを残しておく操作は、こうして手順にしておけます。

ステップ1「KASHIKA ダッシュボード」を開く。売上・訪問件数・稼働率と、保険別の訪問件数が表示されている
ステップ1:最初に開く画面
ステップ2「職員別」をクリック。押したタブが拡大され、枠で囲まれている
ステップ2:押した場所が拡大され、印が付く
ステップ3「先月」をクリック
ステップ3:説明文は画面の言葉のまま
ステップ4「看護」をクリック。職種の「看護」が拡大され、右に画面全体の小さな図がある
ステップ4:右の小さな図で、画面全体のどこなのかが分かる
ステップ5「CSVダウンロード」をクリック
ステップ5:画面の右端のボタンも、1ステップになる
「これで完了です」と、CSVをダウンロードしたあとの画面
最後に、こうなっていれば完了、の画面が入る

できたマニュアルはURLで共有できます。緊急対応マニュアルの該当の欄には、このURLを貼るだけで済みます。画面が変わったら、もう一度記録すれば作り直せます。画面の操作マニュアルの作り方は、操作マニュアルの作り方で詳しく説明しています。

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緊急対応マニュアルとして人が足す所

できたものは「どこを押すか」の説明です。緊急対応マニュアルにするには、人が足す所があります。

編集の画面。各ステップに「隠す」、上下の矢印、「削除」、「補足を追加」がある
編集の画面。ステップごとに、隠す・並べ替え・削除・補足ができる
  • いつやるのか、誰がやるのか:緊急対応マニュアルの本文に書きます
  • やってはいけないこと:「押す前に、必ず責任者に確認する」のような注意は、編集の画面の「補足を追加」でそのステップに書き足します
  • うまくいかなかったとき:画面のエラーが出たときの連絡先を、補足に書きます

出来を確かめるチェックリスト

書き終えたら、次の項目を確かめます。

  • 目的に「人の命と安全を守る」が書いてあり、扱わないことも書いてある
  • 緊急度のレベルが3つ以内で、迷ったら高いほうに倒すと書いてある
  • 最初の5つの動きが1ページに収まり、各部屋に貼ってある
  • 全員に代わりの人が決まっている
  • 対応カードに、最初の3つと、やってはいけないことが書いてある
  • 連絡先に、実際にかけて番号が合っているかを確かめた日がある
  • 紙でも持っている(停電で見られなくなっても動ける)
  • 避難経路図が貼ってあり、集合場所を全員が知っている
  • 消火器とAEDの場所を、実際に見に行って確かめた
  • 訓練を1回やり、直すことを更新の記録に残した

このチェックリストを自分の職場に合わせて作り直すなら、チェックリストの作り方が参考になります。

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最後の項目がいちばん大事です。訓練を1回通っていれば、ほかの項目の抜けもたいてい見つかっています。

よくある質問

緊急対応マニュアルとは何ですか?

緊急事態が起きた直後に、人の安全を守り、被害を広げないための動き方を決めた資料です。最初の動き、誰が何をするか、誰に知らせるかを、短い言葉で決めます。事業の再開まで含める計画は、BCPと呼ばれます。

緊急時対応マニュアルの作成方法は?

対象の場所と事態を決め、緊急度のレベルを決め、最初の5つの動きと体制を決めます。そのあとで事態ごとの対応カードを書き、連絡先と備えをそろえ、訓練して直します。この記事の「作り方:6つのステップ」の順です。

緊急対応マニュアルと危機管理マニュアルは何が違いますか?

緊急対応マニュアルは、起きた直後の動き方に絞った資料です。危機管理マニュアルは、事前の備えと事後の対応まで含む、もっと広い資料です。不祥事や情報漏えいの公表の決まりまで書くなら、危機管理マニュアルになります。

小さな会社でも必要ですか?

必要です。人数が少ないほど、1人が動けなくなったときの影響が大きいからです。小さな会社は、役割を兼ねて構いません。ただし、判断する人と記録する人は分けます。事態の数も、最初は3つで十分です。

何ページくらいが適切ですか?

決まったページ数はありません。目安は、最初の5つの動きが1ページ、対応カードが1事態1ページ、連絡先が1ページです。全部を足しても、10ページ前後に収まるのが読みやすい目安です。長くなったら、細かい説明を別の資料に回します。

わかりやすいマニュアルのテンプレートはありますか?

緊急以外のマニュアル(仕事の全体、1つの作業、画面の操作)なら、マニュアル作成のテンプレートでWord・Excel・PowerPointの型を配っています。どのテンプレートでも、わかりやすさを決めるのは型より書き方です。1行に動きを1つ、動詞で終える、画面の言葉をそのまま使う、の3つを守るだけで読みやすくなります。

消防計画の代わりに使えますか?

使えません。消防計画は消防法で定められた届出の書式があります。対象かどうかも、管轄の消防署に確かめてください。このテンプレートは、日々の運用の資料や、消防計画を作るときの下書きとして使えます。

外国人スタッフにも伝わりますか?

最初の5つの動きと避難経路図は、やさしい日本語か、母語に訳したものを用意すると安心です。言葉に頼らない図や、非常口のマークも活用します。訓練には全員が参加してもらいます。

出典

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